Vol.5 「潤す」・「保つ」について

アルソアR&Dセンター
樋口美雪
皮膚を保湿する意義
皮膚の美しさが外見上の美しさを決定づける重要な要素であることは、疑いようもない事実だと思います。みずみずしく、透明感がある、健康で、しなやかな、若々しい皮膚…。この皮膚の美しさを大きく左右するのが、「潤す」・「保つ」という、皮膚を保湿するステップです。
皮膚の保湿は、10~20 µmというごく薄い“角層”の水分量で決まります。角層の水分量が適切に保たれることで、各種酵素反応が進行してターンオーバー(新陳代謝)が正常に行われ、質の良い角層細胞で構築された高いバリア機能が発現します。このような皮膚は高い保湿機能を有し、しっとりと柔軟性があり、キメが整ってツヤがあり、光の透過性が増して明るく見えます。最近では、保湿により皮膚の柔軟性を保つことが、小ジワだけでなく、加齢による大ジワの発生抑制にもつながると考えられています。他にも、保湿による有用性は多岐に亘りますが、アトピー性皮膚炎の素因をもつ赤ちゃんの研究において、保湿による発症抑制効果が確認されたことも大きな意味を持つと思います。
皮膚の保湿とは、単純なものではなく、恒常性維持に加え、様々な有用性をもたらす、大変意義深いものです。長く研究が行われてきた中、最近になっても新たな発見がなされるほど、深奥な面白い分野だと思います。
  • 保湿しない場合

  • 保湿した場合

効果的な保湿方法
皮膚を効果的に保湿するためには、角層の深部まで水分を届ける必要があります。深部まで到達した水分は、容易には蒸発せず、保湿された状態が持続します。より深部に届けるポイントは、与える水分の“量”と“時間”にあります。
「潤す」のステップでは、手のひらでお顔をやさしく押さえるようにして、しっとりするまで複数回化粧水を重ねづけします。まさに理にかなった方法と考えられ、複数回重ねることで、より多くの水分量を与えることができますし、複数回なじませるのに一定の時間を要します。加えて、手のひらで適度に温めながら潤すことも、より深部へ水分を届けるのに役立ちます。
「保つ」のステップでは、角層に十分に与えた水分を、美容液等で保持して、保湿された状態が長時間持続するようにします。与えた水分が徐々に放出されると、角層のバリア機能が整う効果があることも知られています。
ただし、「潤す」にしても「保つ」にしても、やりすぎは禁物です。例えば、化粧水を過剰に重ねづけして角層が膨潤すると、物理的にも皮膚のpH上昇によっても、バリア機能は低下してしまいます。また、個々の皮膚状態に合わない、過剰なスキンケアは、刺激やニキビ等のトラブルの原因になる可能性があります。
ご自分の皮膚に合うスキンケアは、使ってみて“心地良い”と感じられる場合が多いのではないかと思います。皮膚状態は毎日同じではありません。ご自分の皮膚と相談しながら、その時々で“心地良い”と感じられるスキンケアをすることが大切です。内的・外的要因により皮膚の乾燥を招きがちな現代ですが、心地よく保湿して、美しい皮膚を保っていきましょう。

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